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声をひそめて、富田が訊いた。
「はあて、神主さんになるのもえらいもんだのう」
最後に行つた家は河上の小一里るある辺で、そこいらは人家は数へるほどしかなく、河つ縁ぷちに沿つた段々畑の中を幅の広い国道だけがほの白く浮いて、次第下りに河原町の方へつゞいていた。軽くペタルを踏むだけで、彼の乗つた自転車は半ばひとりでに快い同じ速度で走つた。
これはちっとも可笑おかしくない!彼ら二人は実にいい夫婦なのである。
人間の頭の廻転などというものは、その人の性質に応じて方法を講じることができるものだ。絶対のものではないし、神秘的なものでもない。苦しかったら、まず、方法を考えることだ。精神などといって、非物質的な張本にまつりあげるのは、精神を増長させるばかりで、物質的に加工しうる限度をひろげるように工夫すると、相当に細工のきくシロモノだということが分ってくる。
「もう遅いんですよ、おぢいさん。泊つてつたらどうです」
房一は慌てて、診察にかゝつた。その後で彼は云つた。
練吉は眠気から覚めたやうに、
日は高く上つて、噎むせるやうな温かい空気が、時々、風の工合で河原の方からやつて来た。徳次も切り上げて来た。三箇の魚籠びくを中にして、頭を並べて獲物を見せ合つた。
「いゝかね。あんたの身体はどこも悪くない」
房一はふりかへつた。