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    「それあ、さうだらうなあ。なんしろ広い海のこつた!――ねえ、君」

    「あんたは鮒をたべなさるかね」

    練吉はさつきから一人で喋つていた。

    「やあ」

    房一は手足を洗ふと、簡単に診察着をひつかけて表へ廻つた。

    「さうです、小倉組の方ですな」

    二人は今船で流れの上を渡つていた。綱を手繰たぐる徳次のわきには房一が自転車のハンドルをつかまへて立つていた。全体に銀白色の金属でつくられたこの自転車はいかにも新しげだつた。それさへ、徳次の目には医療器具か何かのやうに特別な機械に見えた。

    「いゝかね。あんたの身体はどこも悪くない」

    「相沢の先代が生きている間は知吉さんも手が出なかつたのさ。目の上の瘤がなくなつたから、いよいよ本性を出したといふところだらう」

    二人が男を抱き起して、レザア張りの診察台へつれて行つた。男は殆どされるまゝになつていたが、身体は案外自由が利くらしく片手をつかつて横になつた。そして又もやぱつちりと眼を開け、不安さうに房一を見上げた。

    「君達は一体何者だ!」

    と、小谷が云つた。

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